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旭川地方裁判所 平成2年(わ)143号 判決 1990年10月08日

本店所在地

北海道旭川市新富三条一丁目九番四〇号

丸上株式会社三協

(右代表者代表取締役 上杉忠次)

本籍並びに住居

同市永山六条四丁目九三番地

会社役員

上杉忠次

昭和五年五月一二日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官田中順太郎出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人丸上株式会社三協を罰金二五〇〇万円に、被告人上杉忠次を懲役一年六月にそれぞれ処する。

但し、被告人上杉忠次に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人丸上株式会社三協(以下、「被告人会社」という。)は、肩書地に本店を置き、木材及び木材製品類の輸出入並びに国内販売などを営業目的とする資本金五一五〇万円の株式会社であり、被告人上杉忠次は、被告人会社代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人上杉忠次において、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空仕入の計上などの不正な方法によりその所得を秘匿した上、

第一  昭和六〇年一一月一日から同六一年一〇月三一日までの事業年度における所得金額が八四一六万二九三七円で、これに対する法人税額が三四五九万二二〇〇円であるにもかかわらず、同六二年一月三〇日、旭川市八条通一四丁目四一六七番地の一所在の所轄旭川東税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三二一四万五一〇九円であり、これに対する法人税額が一二〇六万八八〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限である同年一月三一日を徒過させ、もつて、不正の行為により、被告人会社の右事業年度の正規の法人税額との差額二二五二万三四〇〇円を免れ

第二  昭和六一年一一月一日から同六二年一〇月三一日までの事業年度における所得金額が一億四六六八万六一五九円で、これに対する法人税額が六〇〇〇万五一〇〇円であるにもかかわらず、同六三年一月二八日、前記旭川東税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三九〇二万一八八七円であり、これに対する法人税額が一四七八万五八〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限である同年二月一日を徒過させ、もつて、不正の行為により、被告人会社の右事業年度の正規の法人税額との差額四五二一万九三〇〇円を免れ

第三  昭和六二年一一月一日から同六三年一〇月三一日までの事業年度における所得金額が一億五一七三万〇八五四円で、これに対する法人税額が六二六七万二九〇〇円であるにもかかわらず、平成元年一月二六日、前記旭川東税務署において、同税務署長に対し、所得金額が五七七一万二〇三二円であり、これに対する法人税額が二三一八万五三〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限である同年一月三一日を徒過させ、もつて、不正の行為により、被告人会社の右事業年度の正規の法人税額との差額三九四八万七六〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示冒頭事実を含む全部の事実について

一  被告人上杉忠次の当公判廷における供述

一  被告人上杉忠次の検察官に対する平成二年四月二四日付、同年五月一七日付(検乙2号証)、同月二二日付、同月二三日付各供述調書

一  被告人上杉忠次作成の各上申書(四通)

一  中川嘉行の検察官に対する平成二年四月二五日付(二通)、同年五月一五日付各供述調書

一  小山昇、黒田敏夫、松浦和雄、髙田誠久、西田一司及び山本耕一の検察官に対する各供述調書

一  検察事務官作成の各捜査報告書(二通)

一  検察事務官作成の脱税額計算書

一  大蔵事務官作成の売上高調査書、期首商品棚卸高調査書、当期商品仕入高調査書、期末商品棚卸高調査書、旅費交通費調査書、交際費調査書、租税公課調査書、受取利息配当金調査書、雑収入調査書、有価証券売却益調査書、交際費等の損金不算入額調査書、事業税認定損調査書、貸倒引当金繰入超過額調査書

一  中川嘉行作成の確認書

一  商業登記簿謄本

判示第一及び第二の各事実について

一  被告人上杉忠次の検察官に対する平成二年六月七日付供述調書

一  坂本通、東田正範及び岩寺一之の検察官に対する各供述調書

判示第二及び第三の各事実について

一  中川嘉行の大蔵事務官に対する平成元年一一月二七日付質問てん末書

一  喜多杉寿の検察官に対する供述調書

一  検察事務官作成の電話聴取書

判示第一の事実について

一  被告人上杉忠次の検察官に対する平成二年五月二一日付供述調書

一  中川嘉行の大蔵事務官に対する平成元年一一月二八日付質問てん末書

一  橋場勝利作成の答申書

判示第二の事実について

一  被告人上杉忠次の検察官に対する平成二年五月一八日付供述調書

一  曽根隆の検察官に対する供述調書

判示第三の事実について

一  被告人上杉忠次の検察官に対する平成二年五月一七日付供述調書(検乙3号証)

一  中川嘉行の検察官に対する同年四月二六日付供述調書(検甲26号証)

(法令の適用)

被告人上杉忠次の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重いと認める判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一年六月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

さらに、被告人上杉忠次の判示各所為は、いずれも被告人会社の業務に関してなされたものであるところ、被告人会社の判示各所為はいずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当するので、情状により同法一五九条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により合算した金額の範囲内で被告人会社を罰金二五〇〇万円に処することとする。

(量刑の理由)

本件は、被告人会社の代表取締役として、業務全般を統括していた被告人上杉忠次が、被告人会社の業務に関し、三年間にわたり、計画的に敢行した総額一億〇七二三万円余の多額に達する法人税脱税事犯である。納税の業務が国民に課せられた最も基本的な義務であることは論をまたないところ、被告人上杉忠次は、被告人会社の設立された昭和五七年度の申告の当初から、不景気に備えて会社財産を備蓄し、あるいは取引先から木材の仕入値段をつり上げられるのを避けるとともに、自らの私的利益をはかるため、法人税をほ脱することを計画し、毎年、その年の事業年度の実質利益の予想できる時期になると、配下の者に不正経理を指示し、あるいは取引先に協力を求めるなどして、売上げの繰延べ、架空の売上げ、仕入れの水増し、架空の仕入れ、架空在庫の圧縮、旅費の水増しなどの巧妙かつ多岐にわたる方法により計画的に当該事業年度の利益を過少に計上させ、こうして計上された利益を過少申告していたものであり、本件各犯行を含めると実に七年間もの長期間にわたり、法人税を脱税していた事実が窺われるのである。こうした本件犯行の罪質、動機、態様、結果、また、ほ脱率、すなわち本件犯行にかかる三年間のほ脱率が平均六七パーセント強の高い割合であること等に照らすと、犯情は悪質であり、被告人上杉忠次の刑事責任は厳しく追及されなければならないというべきであるが、一方、同被告人は、本件の税務調査が開始されて以降、犯行を率直に認めており、当公判廷においても真摯な反省の態度を示していること、同被告人にはこれまで前科前歴がなく、本件各犯行が新聞報道されたこと等により相応の社会的制裁を受けていること、並びに被告人会社においては、本件で免れた税金につきその後修正申告を行い、本税のほか、重加算税等を全て納付していることなどの有利な情状も認めることができる。そこで、当裁判所は、以上の情状を総合考慮し、主文掲記の科刑をもつて相当であると思料した。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 川上拓一 裁判官 古部山龍弥 裁判官 清水響)

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